3 事件の幕開け(4)

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「あっあのね、好みで!」  照れくさいのか、縲はぎこちなく笑った。 「ああいう感じの男の人って、昔っからなんか好きで。だからついつい、用事作って話したくなっちゃって。ごめんね、まぎらわしいことしちゃって」 「……そう」  十子はつぶやいた。  決して大きくはないにしても、心のどこかがぽかりと開いた気がした。  縲は、今度は逆に詰め寄ってきた。  必死さすらある。 「ね、でもこれ内緒だよね、ここでの話って全部内緒でいいんだよね!?」 「ええ、もちろん」  どこか上っ面な返事になってしまったことを十子は自覚した。  縲はまたバルコニーから帰っていった。  無事に飛び移って手を振った彼女に手を振り返してから、十子は自室に戻り、閉めたガラス戸に軽くもたれた。  背に忍び寄る夜の冷気が、いまの心にはしっくり来た。
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