3 事件の幕開け(4)

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       § § §  朝食後、自室で手紙を書いていた十子は顔をあげた。  ひかえめなノックがしたからだが、新聞はすでに運ばれており、配達物が届けられるには早い。 「お嬢さま、頼まれましたお茶でございます」  そんなおぼえもない。  十子はとまどいながら返事をした。 「どうぞ?」  まだ勤めて間もない初々しい女中だった。  顔は緊張に青ざめ、手にした茶の盆がかたかたと震えている。  十子は驚いて彼女に駆け寄った。 「どうしたの?」 「あああ、あの、すみませんすみません。お嬢さまに、こちらを渡すようにって」  十子は盆を下ろさせ、その上にたたまれていた純白のナプキンを取った。  封されたままの手紙があった。  若い女中が泣きそうになりながら訴えてくる。
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