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朝食後、自室で手紙を書いていた十子は顔をあげた。
ひかえめなノックがしたからだが、新聞はすでに運ばれており、配達物が届けられるには早い。
「お嬢さま、頼まれましたお茶でございます」
そんなおぼえもない。
十子はとまどいながら返事をした。
「どうぞ?」
まだ勤めて間もない初々しい女中だった。
顔は緊張に青ざめ、手にした茶の盆がかたかたと震えている。
十子は驚いて彼女に駆け寄った。
「どうしたの?」
「あああ、あの、すみませんすみません。お嬢さまに、こちらを渡すようにって」
十子は盆を下ろさせ、その上にたたまれていた純白のナプキンを取った。
封されたままの手紙があった。
若い女中が泣きそうになりながら訴えてくる。
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