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4 うずまく疑い(1)
「──ということであんたの素性をごまかすために適当吹いちゃったから、十子さまから何か匂わされても無視してよね!」
一気に昨夜の事情をまくしたてたあと、縲は勢いよく息を継いだ。
短い梯子に登った尤雄は、植木の枝をくくる手を止めもしない。
当然縲を見てもいない。
「わかった」
ただ短く答えた。
今日の昼食は大根の煮物だ、と言われた程度の反応だった。
「……何か訊くことないの?」
「別に」
「なんにも? 怪我はしなかったかとか、そんなことも?」
「ここまでひとりで歩いて来てんだ、怪我なんてしてねえってことだろ」
「そりゃそうだけど」
縲は小さく息をついた。
昨夜、枕相手にひとしきり八つ当たりして落ち着いたあと、ふと気づいた。
尤雄が十子との話が終わるまで庭にいたのは、自分の無事を見届けたかったからではないかと思ったのだが。
(ま、こういう奴だったわ)
まったく、優しいのか優しくないのかちっともわからない。
拍子抜けしたが、と同時に気持ちが楽になる。
それに昨夜はいろいろあったにしても、これでいくら尤雄と話していても十子から疑われることもなくなった。
縲はからっとした気分で話を変えた。
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