4 うずまく疑い(1)

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 植木の枝の手入れを終えた尤雄が梯子を下り、花壇へ移動した。  縲もついていった。  小菊に似た薄紫色の花や、もくもくと白い雲のようなたくさんの小花が咲いていた。  尤雄が手入れを始め、秋風にほのかな甘い香りが混じる。 (こんなきれいなお屋敷なのに。なんでがいやな思いをしなきゃいけないのよ)  まるで少女のように──そして友達のように──笑っていた昨夜の彼女を思い出して、縲は義憤をおぼえた。  いたずらっぽく、明るく、楽しそうで。  あれがきっと十子の素顔だ。  自分の家だというのに素の自分を出せないとは、考えただけで息が詰まる。 (絶対解決してやるんだから!)  決意を新たにしたところに、尤雄の声がした。 「それも、女中頭の芝居かもしれねえな」  縲は勢いよくうなずいた。 「そう! 鍵がいつまで鍵束にあったかなんて、誰も知らないもの。それに火つけ犯が女中頭だとしたら、どうして鍵のかかったなかに鍵が落ちてたかも説明できるわ」  尤雄は、手を止めもしなければ視線をよこしもしない。  それでも聞いてはいそうな背中に向かって、縲は言った。
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