4 うずまく疑い(1)

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「知らねえよ」  それはそうだろうが、あまりにそっけない尤雄の言い草に、縲は腹が立ってきた。  八つ当たりは承知で背中をにらむ。 「その他人事みたいな口、もうちょっとどうにかならない?」 「他人事だろ。そもそも探偵なんざ、そうやって岡目八目で見なきゃいけねえんじゃねえのか」 「本物の探偵ならそうかもしれないけど。わたしはただ、十子を助けてあげたいの!」  縲がにらむ先、背中が動いた。  尤雄が立ちあがってふりかえる。 「少し待ったらどうだ。このお屋敷のなかの人間が火つけ犯なら、そいつが何をねらってあんなことをしたのか、これからわかってくるかもしれねえ」  そんなのんきな、と言い返しかけて、縲はふと止まった。  たしかに尤雄の言うとおりかもしれない。  なにしろ、あまりに目的が不明すぎる。  もしかしたら何か計画が違って、火つけ犯の思惑どおりにはならなかった可能性もある。  だったら火つけ犯が新たな動きを見せるかもしれない。 「そうね……」  縲はうなずいた。  コンサバトリー放火の件はちょっと横に置いておく。  すると、ひとつ思い出したことがあった。
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