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「知らねえよ」
それはそうだろうが、あまりにそっけない尤雄の言い草に、縲は腹が立ってきた。
八つ当たりは承知で背中をにらむ。
「その他人事みたいな口、もうちょっとどうにかならない?」
「他人事だろ。そもそも探偵なんざ、そうやって岡目八目で見なきゃいけねえんじゃねえのか」
「本物の探偵ならそうかもしれないけど。わたしはただ、十子を助けてあげたいの!」
縲がにらむ先、背中が動いた。
尤雄が立ちあがってふりかえる。
「少し待ったらどうだ。このお屋敷のなかの人間が火つけ犯なら、そいつが何をねらってあんなことをしたのか、これからわかってくるかもしれねえ」
そんなのんきな、と言い返しかけて、縲はふと止まった。
たしかに尤雄の言うとおりかもしれない。
なにしろ、あまりに目的が不明すぎる。
もしかしたら何か計画が違って、火つけ犯の思惑どおりにはならなかった可能性もある。
だったら火つけ犯が新たな動きを見せるかもしれない。
「そうね……」
縲はうなずいた。
コンサバトリー放火の件はちょっと横に置いておく。
すると、ひとつ思い出したことがあった。
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