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§ § §
コンサバトリーは見れば見るほど哀れな有様だった。
本来なら屋根と三方のガラスからきらきらと日光がふりそそいでいるのだろうが、すすけたガラスではそうもいかない。
一部は亀裂が入ったり割れたりしていて、夜よりもかえって無惨な印象になっている。
化粧前の芸妓が無理やり引っ張り出されたかのようで、こんなざまを見ないでおくという思いやりはないのかと恨んでいそうだ。
(ごめんね。でも、わたしはいま探偵だから)
縲はコンサバトリーに手を合わせて謝ると、割られたガラス戸に近づいた。
ガラスをはめていた木枠もへし折られて人が余裕で出入りできるが、周辺にはガラスが残って少し怖い。
「……それにしても、見事に遠慮なく壊したもんね」
「遠慮してる場合かよ」
ついてきてもらった尤雄がぶすっと言った。
「誰も怪我はしなかったの?」
「多少のやけどやら切り傷ならいたかもな。一番怪我しそうな奴は端からなかには入れねえで、水だけ運ばせといたが、勝手にちょこまかしてたしな」
「ああ、楓次さん」
縲は焼け焦げた床タイルにかがんだ。
場所はほぼコンサバトリーの中央で、頭上のガラスは激しくすすけて一部欠けている。
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