4 うずまく疑い(2)

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 洋装の娘からこんな質問が来るとは、まったく予想外だったのだろう。  御者はうろたえた。 「な、なんか(とげ)とか、とがった石とか、とにかくなんかあったんだろうさ」  またぽそりと楓次の声がする。 「輓鞍をつけて馬車につながれてからも、ちゃんとおとなしくしてましたけど」  縲もまた御者に言う。 「そんな痛い物が鞍にあったなら、馬車につながれる前にでも駆け出したんじゃありません? でも実際に馬が駆け出したのは、十子さまが馬車に乗ろうとしたときだったんですよね?」 「なっなんだおまえ、おれのせいにしようってのか!?」 「誰のせいとかじゃなくて、何があったのかを正確に確かめてるだけです。それとも何か後ろめたいの?」  御者の鞭を持つ手がわずかに動いたが、縲が自分の下役でないことを忘れるほどではなかったようだ。  縲はにやりと笑った。 「だから、そうじゃないんなら調査に協力してよ。あんたがここで一番馬にくわしいんでしょ?」 「……そりゃあ、まあ……おう……」  御者の目つきには気弱の陰がちらつきはじめている。  令嬢の怪我の責任を負わされることは本当にないのか、迷っているらしい。 (自分がそういう卑怯者だからって、一緒にしないでよね)
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