2 心配な計画(1)

2/9

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/133ページ
 やがて十子はすべての手紙を開け、それらの用件に関するクメの意見を聞き終えた。  あとは自分宛ての私信だけだ。  封を切りながら声をかける。 「ありがとう。今日はこれですんだようだわ、下がっていいわよ」  だがクメは訳知り顔の微笑を作っただけで、出ていこうとはしなかった。 「……十子お嬢さま、そのうちの三里(みさと)子爵夫人からのお手紙につきましては、少々お耳に入れたいことがございます」  十子は無言で銀製のペーパーナイフを走らせ、手紙に目を通した。 「一昨日のお礼と、来月のご自宅でのお茶会のお誘いだけれど」 「そのお茶会にご招待されるはずの方についてでございます。なんでも子爵夫人には甥御さまがいらっしゃいまして、その方が今月末に留学を終えて帰国されるとか。たぶんその方もお茶会に呼ばれておりましょう」 「くわしいのね」  十子の声にこもった冷ややかな皮肉には気づかなかったようで、クメの肉の薄い顔に得意げな色が浮かんだ。 「ええ、それはもう。わたくしは十子お嬢さまのためでしたら、どのようなこともおろそかにはいたしません。なにしろ亡き奥方さまから──」
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加