2 心配な計画(1)

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「結婚を急かしてくる人はいないとのことだけれど、あなた自身を心配してくれる人もいないのかしら?」  おかしなことを言ったという自覚が遅れてやってきて、十子は一瞬どきりとした。  だが尤雄はそれまでとまったく同じ態度のままだった。 「はい」  そんな彼がありがたかった。  十子は一度息をつき、再度口をひらいた。 「──寂しくはない?」 「はい」 「そう。あなたは強いのね」  十子はふりかえった。 「知っているかしら、応接間に絵があるの。地球儀を見ている地理学者の肖像画。父が、自分に似ている気がするといって洋行先から送ってきたのよ。実際よく似ているわ。西洋人の絵なのにふしぎなくらい」  尤雄は無言だったが、耳を傾けてくれている雰囲気は伝わってくる。  彼だったら何を言っても許してくれる気がした。  十子は胸の奥にわだかまる思いを口にした。 「父は自分が自由に生きている分、娘のわたしの意思も尊重してくれる人。わたしが何をしようと、決して反対などしないわ。──でも本当にたまにではあるのだけれど、絵ではなくて実際の父がいてくれたらと思うときがあるの。たぶん、ときどきはそんな人がそばに必要なのよ」
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