2 心配な計画(2)

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2 心配な計画(2)

 田友(でんゆう)宅の庭石の落とす影はもう長い。  呼びつけられて座敷で待つ(るい)は、何度目かのあくびをした。  出された番茶はとうの昔に空になっている。  外の空気も冷えてきて、縞の着物の首もとあたりがすうっとしてきた。 (……何をぐずぐずしてんだろ、あの狸親父)  縲は壁の八角時計をにらみつけた。  あるじの代理のようにでんと構えた立派な時計は、高価な舶来物なのだろう。  他の調度類も立派だし、畳も青みが残って半年も使っていないようだしで、改めて見ると裕福さがあふれている。 「──いたか」  山鳩色の紬を着た田友が入ってきた。 「ええ、ずっと待ってましたよ」  縲のひかえめな皮肉を無視して、田友は長火鉢の横にどっかと座った。  煙管(きせる)の準備をしながら言う。 「()の家で起こす事件を決めた」  縲は目を丸くした。  江那堂(えなどう)男爵家で事件を起こし、縲がそれを解決してみせて、令嬢・十子(とおこ)の信頼を得て仲を深め、その財産の源を探り出す──これが縲に与えられた課題だ。  しかし先日の茶会で会った十子は、自分に取り入ろうとする縲のもくろみをすっかり見抜いていた。 「いま事件を起こしたって無理ですってば! 賢いお嬢さまでしたもん、わたしに相談なんてしませんって」
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