2 心配な計画(3)

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 落ちた物を急いで戻し、縲は新聞紙をつかんでそそくさと表通りへと出た。  誰も追ってきていないことを確認してから、ガス灯に近づいて新聞をひらく。  鳴東新聞には真摯な記事が並んでいた。  時事にからめた舌鋒鋭い政策批判に、官憲や富裕層の横暴への非難、民間慈善事業への寄付呼びかけなど、社主の人となりからはちょっと想像がつかない紙面だった。 (意外……)  驚きながらめくっていくと、何かがはらりと足もとに落ちた。  鳴東新聞社付けで、田友個人宛ての葉書だった。  先ほど雑貨を戻したとき、新聞紙にまぎれてしまっていたらしい。 「あ」  宛名書きの筆跡に見おぼえがある。  こんなにものびやかで流麗な筆跡は忘れようがない。  田友宅で見た、長火鉢の火にくべられてしまった手紙だ。  縲はあわてて葉書をひっくりかえした。 『いいかげんによしておけ』  警告だろうか。  全面を使っての仮名書きで、署名はない。 (何これ)  ガス灯にもっと近づいて葉書をくわしく見ようとしたとき、店内から声がかかった。 「いらっしゃいませ、何をさしあげましょう」 「あっいえ! あのその」
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