2 心配な計画(3)

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 縲は軽い足取りで通りをあとにした。  今晩の夕飯をこれですませればいいだけだ。  人生捨てたものではない気がしてくる。  冷めないように、つぶれないように、大事に大事に饅頭を持って家路をたどろうとした縲は、そこでふと気づいた。 (……このあと打ち合わせるって言ってたような……)  田友と決別する前に、気がかりがひとつだけある。  縲は急いで田友宅へ引き返した。  薄暮の町はみるみる暗くなり、空は藍色に染まっていく。  無理は承知で限界まで爪先立って、板塀がのぞけないかと頑張ってみたが、無理なものは無理だった。 (来てるかな、来てないかも……お饅頭も冷めちゃう)  このあと尤雄(あやお)と打ち合わせる、と田友は言っていた。  だが、それが今日かはわからない。  もう少しだけ待って何もなかったら帰ろう、と縲が心に決めたとき、小さな音がした。  縲は板塀にぴたりと貼りついた。  門のくぐり戸がひらいて、ぬっと出てきた者がいた。  夜目にも短い髪と肩の張った痩身がわかった。 「柳尤雄!」  小声ながらも鋭く呼び止めると、相手はふりむいた。  その手がすっと下がった気がしたが、気のせいだったかもしれない。 「──阿縲(あるい)か?」
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