2 心配な計画(3)

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 低い声で略称を呼ばれて、縲はむっと眉根を寄せた。 「その言い方、よしてくれる? それよりちょっとちょっと」  尤雄の袖を引っ張って、縲は手ごろな小路へ彼を引っ張りこんだ。  彼は抵抗しなかった。  ただ、縲が足を止めた途端に声がした。 「なんの用だ?」  両脇に塀の迫る小路はすっかり夜の闇に包まれて、尤雄の顔はろくに見えない。  それでも縲は彼を見上げた。 「もうあの狸親父に聞いたかもしれないけど、わたし、今回の件はやめたから。あんたもちゃんと話聞いた? あいつ、あんたを犯罪者にしてとっつかまえるつもりなんだって」 「知ってる」  短い返答に、縲はちょっとほっと息をついた。 「じゃああんたもやめるの? そうだよね、あんな奴のためにばかばかしい──」 「いや、やるが」 「は!? なんであんな奴のために!?」 「あいつのためじゃねえよ」 「ちょっ、ちょちょちょちょ」  縲はもう一度尤雄の袖をつかんで、ぐいと自分に引き寄せようとした。  尤雄は、今度はがんとして動かなかった。  縲は自分から身を乗り出した。
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