2 心配な計画(3)

10/11

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/133ページ
       § § §  この時期は掃いても掃いても落ち葉がたまる。  江那堂(えなどう)男爵邸の庭で掃き集めた落ち葉に火がついたことを確認して、尤雄は立ちあがった。  ちらと応接間に目をやる。  と、そこの大きなガラス戸がちょうど開いて十子(とおこ)が出てきた。 「これも燃やしてしまって」  また差し出された何通かの手紙を尤雄は受け取り、火にくべた。  男爵令嬢みずからいちいち庭に持ってこなくてもとは思うが、居室の暖炉に火が入るまではこれが楽なのだろう。 「あなた、いまこちらを──応接間を見ていたの?」  十子が訊いてきた。  気づかなかったが、すでにそのとき彼女は応接間にいたらしい。  見られたのはまずかったか、と尤雄は無表情な顔の下で自問した。  しかし自分が応接間の絵画に興味があると彼女に思われることは、今後の仕事への布石としては悪くないかもしれないと思い返す。 「絵があるとうかがいましたので」 「ああ、絵……絵に、興味があるのかしら?」
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加