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2 心配な計画(4)
窓の外にわずかに見えていた最後の煙も消えた。
居室のカーテンにもたれるようにぼんやり外を眺めていた十子は、なんとなく小さく息をついた。
園丁の尤雄が手際よく焚火のあと始末をすませ、庭の隅を横切っていく。
そのとき、廊下にかすかに足音がした。
十子はあわてて机に戻った。
「十子お嬢さま、少々よろしゅうございますか」
女中頭のクメだった。
ことさら険しい顔つきだった。
「おそれながら、当家の人事につきまして意見がございます。聞いていただけますか」
これまで彼女からうれしくなるような話を聞いたことがあっただろうか──十子は少し考えた。
クメがうれしそうに話した話ならある。彼女に合わせてうれしがってみせたことも、子供のころにはある。
だが、最近はまったくおぼえがない。
十子はぼんやりあきらめながらクメをうながした。
「どうぞ」
クメは意気込んだ様子で口をひらいた。
「執事の駒藤の件にございます。一度しっかりと調査なさるべきかと存じます。あれは、確実に何か悪事をはたらいておりますよ!」
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