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§ § §
空は美しい夕焼けに染まっている。
こんな時間はおだやかに、静かにすぎていくべきものなのに──そんな理不尽さをぼんやり感じながら、十子は立ち尽くしていた。
──早く水を!
──その前に鍵だ!
周囲で騒ぐ使用人たちの声がどこか遠い。
十子の目の前、ガラスのむこうでは、ごうごうと炎が燃えさかっていた。
まるで空の夕焼けが落ちてきたかのようなあざやかな輝きが、十子の目をも焼こうとするかのように暴れていた。
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