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「どうやら盗難目的の目くらましではなかったようですから、誰がどうしてこんなことをしたか、改めて調べてみます!」
「ええ、お願い。腹いせのつもりなのか、ほかに理由があるのか、いずれにしてもこのまま放っておくわけにはいかないわ」
十子は静かに、それでいて毅然と言った。
(すみません、困らせちゃって。みんなあの狸親父のせいなんです!)
心のなかで彼女に詫びながら、縲は焼け焦げにかがみこんだ。
尤雄に会うそれっぽい口実は作れないかと考える。
(何かに火をつけて、このこんさばとりいを燃やそうとした……?)
床タイルに焼け焦げを残すくらいだから、炎は相当激しく燃えたようだ。
着火には紙類が使われたらしく、もろく薄い真っ黒な燃えかすがあたりに散っている。
そんななか、しっかりした厚紙がわずかに焼け残っていた。
(なんでこんな物を使うのよ、ここは気をきかせなくっていいってば! 落ち葉だとか枯れ枝だとか、もっと園丁らしい物が手近にいくらでもあったでしょ!!)
それだったらすぐに尤雄を調べる口実になったのに、と内心ぶつくさ言いながら、縲は焼け残りをつまみあげた。
「なんでしょね、それ」
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