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いかにもうんざりしたといった様子だった。
いったん落ち着いたはずが、またむっとさせられる。
(どこまでも優しくない!!)
こんな男は、農村にいようが市中にいようが、いや金をたっぷり持っての色街ですら女に好かれるわけがない。
なんだか意地になって、縲は言い返した。
「そりゃそうだけど、安心させてくれたって罰は当たらないでしょ!」
「おれはちゃんと答えてる。安心するもしねえもそっちの問題だ、自分でどうにかしろ」
「前にわたしの酒蒸し饅頭あげたじゃない! その恩義くらい感じたらどうよ?」
尤雄は縲を見ると、また息をついた。
「押しつけた半欠け饅頭の恩義かよ……」
「恩義は恩義でしょ。はい」
縲はすましてうながした。
尤雄は三度ため息をついた。
「おれじゃねえよ」
説得力を超えた真実味が、苦々しい声ににじんでいた。
縲は満足して息をついた。
けっ、と舌打ちまじりの声が聞こえたが、聞き流す。
「ありがとう、これで安心した! あんたが何もやらかしてなくて、ほんっとよかった」
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