3 事件の幕開け(2)

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 いかにもうんざりしたといった様子だった。  いったん落ち着いたはずが、またむっとさせられる。 (どこまでも優しくない!!)  こんな男は、農村にいようが市中にいようが、いや金をたっぷり持っての色街ですら女に好かれるわけがない。  なんだか意地になって、縲は言い返した。 「そりゃそうだけど、安心させてくれたって罰は当たらないでしょ!」 「おれはちゃんと答えてる。安心するもしねえもそっちの問題だ、自分でどうにかしろ」 「前にわたしの酒蒸(さかむ)饅頭(まんじゅう)あげたじゃない! その恩義くらい感じたらどうよ?」  尤雄は縲を見ると、また息をついた。 「押しつけた半欠け饅頭の恩義かよ……」 「恩義は恩義でしょ。はい」  縲はすましてうながした。  尤雄は三度ため息をついた。 「おれじゃねえよ」  説得力を超えた真実味が、苦々しい声ににじんでいた。  縲は満足して息をついた。  けっ、と舌打ちまじりの声が聞こえたが、聞き流す。 「ありがとう、これで安心した! あんたが何もやらかしてなくて、ほんっとよかった」
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