3 事件の幕開け(2)

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 ひとまず尤雄を監獄送りにすることは防げた。  そのことが単純にうれしくて、縲は自然と彼に笑いかけた。  だが、尤雄の不愛想は揺るぎなかった。 「……で、どうすんだ? おれが盗みをたくらんでたって嬢さんにご注進(ちゅうしん)か?」 「なんでよ? そもそも、そんなことしたくないから来たんじゃない。あんたは見たところ丈夫そうだし、探せば何か仕事くらいあるわよ。あんな狸親父なんかとは手を切って、まっとうに働きなさいって。そしたらきっと、いいこと見つけられるから」 「人の世話を焼くより先に、自分の面倒を見たらどうだ」 「わたしはちゃんと働くけど? そりゃまだ仕事先は見つかってはないけど、これから──」 「その前に、だからまずここはどうすんだよ? 探偵として呼ばれたんだろ、探偵として働かなきゃ筋が通らねえぞ」 「あ!」  縲はぽかんと口を開けた。  尤雄の犯罪を未然に防げたうれしさで、すっかり忘れていた。  さらに追撃が来る。 「実は偽探偵なんで帰ります、とでも言うのか? だったらなんで偽探偵を名乗って嬢さんに近づいたか、後ろに誰がいるか、結局は全部話すことになると思うがな」 「うっ……」 「軽々(けいけい)に飛んでくるからだ。少しは考えてから動け」
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