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「当たり前だ、無駄なことばかりしやがって。戸もがたがたやってたが、開くはずがねえだろ」
「開いたらいいなと思ったんですよ、やってみなきゃわからないじゃないですか。まあ開かなかったですけど。コンサバトリーには戸が二つあって、庭側も本館側もおんなじ鍵なんですが、本館側は普段は開いてるらしいんです。ところがあのときは、本館側にも鍵がかけられて開かなくて」
「そのうえ鍵が見当たらねえと、女中頭と執事が騒いでた。仕方ねえからガラス戸を壊して、みんなで火を消した」
以上だ、と尤雄は話をしめくくった。
縲はふむふむとうなずいた。
(じゃあ火つけ犯は、鍵を盗んで火をつけて鍵をかけて逃げたってことよね)
尤雄が鍵についてほかにも何か知っていれば、きっとさりげなく話してくれたことだろう。
つまり鍵はまだ見つかっていない。
たったいま聞いた話ばかりだったが、縲はいかにも探偵らしく考えたあとのようなそぶりで楓次に尋ねた。
「そこがわからないんですよ。こんさばとりいの鍵は、お屋敷の人なら誰でも持ち出せたんですか?」
視界の隅で、尤雄が牽制するような横目で見てきた。
楓次には関わるなと言いたいらしい。
(でも、探偵としてふるまわなきゃいけないでしょ!)
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