5人が本棚に入れています
本棚に追加
/133ページ
鋭い視線ともども、なんだか言外の意がたっぷりと込められている気がする。
縲はすまして、目撃者に話を聞いた探偵として彼に言った。
「はい、とりあえずは大丈夫です。お話をありがとう」
尤雄の視線が恐ろしいまでに鋭くなったが、無視する。
そこへ楓次がのんびりと言ってきた。
「そういえば、さっきの焼け残りの件ですけど」
(なんだっけ!?)
いきなり言われてあせりつつ、表面上は冷静をとりつくろう。
「ええ、どうしました?」
「調べる前に呼んでこいって言われちゃったんで、まだなんにもわからないんですよ。明日でも大丈夫ですか?」
「もちろんです」
「よかった。じゃあ明日にでも」
わからないまま話を合わせてみたところ、楓次は完全に納得してくれたようだった。
ほっと安堵し、縲は彼につれられて本館に戻った。
尤雄の突き刺すような視線を後頭部に感じたが、気のせいだと思うことにした。
最初のコメントを投稿しよう!