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「ですよね、わたしも学校のとき、あんな先生に竹尺で叩かれましたもん。何かと細かくって」
女中たちの顔に浮かんだ表情は、同意や肯定ばかりを示している。
と同時に、縲をどうやら自分たちに近い側の人間だと感じはじめたような気配がある。
縲はすかさず尋ねた。
「使ってなかったこんさばとりいのお掃除なんかも、結構させられたりしませんでした?」
「ええ、自分だって行きやしないのに、週に一度は掃除させるんです」
今度は微妙ににやついたところを見ると、女中たちはほどほどに手を抜いていたようだ。
「やっぱり。一番最近のお掃除っていつでした?」
「五日前よ」
一番年長の女中が答えた。
が、彼女はそれからあわてて付け足した。
「でも、何も変なことはしませんでしたよ!」
火事の責任を負わされるのではないか、という恐れが急にこみあげたらしい。
縲は彼女をなだめた。
「もちろん。あなたたちのせいじゃないですから安心してください。それに十子さまは、あの火事を大ごとにしないために、わたしを呼んだんですから」
女中たちのあいだに走った緊張が少しほぐれた。
縲がそこでもっと質問しようとしたそのとき。
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