3 事件の幕開け(3)

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       § § § 「──ってことで、あの女中頭は犯人がわかってるんだって。でも誰かってことは聞けずじまい」  庭で落ち葉を掻き集める尤雄の横で、縲はこめかみを指で押さえた。  尤雄が鋭い視線をよこしてきた。 「そんなことをわざわざ報告するためにここに来たのか? いちいちおれの前に出てくんな、勘づかれたらどうすんだ」 「それなら大丈夫、第一発見者には何度でも聞いて正確を極めたいって言っとくから」  けっ、と尤雄はそっぽを向いた。  縲はその背に訊いた。 「それより女中頭が言った犯人って、わかる?」 「さあな。ただあれが犯人にしたいなら執事だろ」 「不仲なの?」 「週に何度も言い争うくらいにはな」 「え、それじゃただの思いこみ?」 「かもな」  私怨からの意見では参考にはならなさそうだ。  縲は吐息をついて、話題を変えた。 「あと、ふしぎなことがあるんだけど」 「なんだよ」 「のふたつの扉。なぜか本館側にも鍵がかかってたって昨日聞いたのに、でもあのとき女中頭は本館側から入ってきたの。内からなら開けられるの?」  昨夜眠れなかった一因の疑問をぶつけてみる。  だが、尤雄の答えはあっけなかった。 「鍵がコンサバトリーの中に落ちてたんだよ。だからすぐに本館側の戸を開けて、そっちからも水を運んだ」 「なあんだ──って、それじゃますますおかしいじゃない! 犯人は火をつけて扉に鍵をかけて、それからどうやってあそこを出たの!?」
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