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§ § §
「──ってことで、あの女中頭は犯人がわかってるんだって。でも誰かってことは聞けずじまい」
庭で落ち葉を掻き集める尤雄の横で、縲はこめかみを指で押さえた。
尤雄が鋭い視線をよこしてきた。
「そんなことをわざわざ報告するためにここに来たのか? いちいちおれの前に出てくんな、勘づかれたらどうすんだ」
「それなら大丈夫、第一発見者には何度でも聞いて正確を極めたいって言っとくから」
けっ、と尤雄はそっぽを向いた。
縲はその背に訊いた。
「それより女中頭が言った犯人って、わかる?」
「さあな。ただあれが犯人にしたいなら執事だろ」
「不仲なの?」
「週に何度も言い争うくらいにはな」
「え、それじゃただの思いこみ?」
「かもな」
私怨からの意見では参考にはならなさそうだ。
縲は吐息をついて、話題を変えた。
「あと、ふしぎなことがあるんだけど」
「なんだよ」
「こんさばとりいのふたつの扉。なぜか本館側にも鍵がかかってたって昨日聞いたのに、でもあのとき女中頭は本館側から入ってきたの。内からなら開けられるの?」
昨夜眠れなかった一因の疑問をぶつけてみる。
だが、尤雄の答えはあっけなかった。
「鍵がコンサバトリーの中に落ちてたんだよ。だからすぐに本館側の戸を開けて、そっちからも水を運んだ」
「なあんだ──って、それじゃますますおかしいじゃない! 犯人は火をつけて扉に鍵をかけて、それからどうやってあそこを出たの!?」
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