3 事件の幕開け(3)

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 縲は仰天したが、尤雄はやはりそっけなかった。 「知らねえよ」  ささいな疑問がさらなる難問になってしまった。  今夜も眠れなくなりそうだ。  縲はぎゅっと指先でこめかみを押した。 「そもそも犯人はなんであんなところに火をつけたのか、そこを考えるべきよね」  そこでふと気づく。  縲はうきうきと尤雄の前に回りこむ。 「ねえ、いまのわたしって探偵らしくなかった!?」  返ってきたのは、そっけないという程度をはるかに越した冷ややかな視線だった。  縲もさすがにわれに返った。  うっかりはしゃいだ恥ずかしさもあって、ぶすっとむくれる。 「……はいはい、すみませんでした。でも探偵をやらなきゃいけないから、鍵の管理について執事に聞いてくるわ」  縲は尤雄から離れて本館へとむかった。  後ろから声がした。 「──執事なら、いまは忙しくしてるはずだ。昼飯後、仕事をしてるふりのときにつかまえろ」  縲はふりかえった。  尤雄は背中を向けていたが、腰に差した煙管(きせる)が目くばせするようにきらりと光った。 「ありがと」  縲はにこりと礼を言い、軽い足取りで立ち去った。
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