1人が本棚に入れています
本棚に追加
私はマンションの階段を息も絶え絶えに登ってゆく。エレベーターの無いマンションだった。だから駅から近いわりに家賃も比較的安いのだろう。しかし疲れている時はきつかった。
平日の午後十時過ぎ。
今日は災難続きだった。
まず急な会社の残業で帰るのが遅くなった。やっと仕事が終わり電車に乗ろうとしたら、人身事故の影響で一時間近くも待たされるはめに、ようやく電車が動き出し自宅の最寄り駅に着いた。そして駅前のスーパーで買い物をしてから帰ろうとしたら、レジにいる客と店員が何やら揉めていて、そこでもしばらく待たされた。
ああ、疲れた。
やっとマンションの四階にある自分の部屋の前まで来た。鍵を開け中に入る。
その時だ。
妙に厭な予感がした。
私は部屋の明かりをつけた。暗闇が一瞬にして光の空間に変わると同時に、私はそれを発見した。
部屋の奥、エアコンの下の壁のあたりでささっと何かが動いた。
蜘蛛だった。しかも巨大な蜘蛛。人間の手のひらくらいの大きさだ。
最初のコメントを投稿しよう!