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――夕陽が沈む瞬間を無言で見守り、僕は決意を固めた。
「静!」
「帰ろう!」
「えっ、あっ……」
きみは夕陽が沈むとすぐに海に背中を向け、自転車に向かってそそくさと歩き出した。
そして、僕が解錠する前に自転車の荷台にまたがった。
良さげだと思っていた雰囲気も一気にぶち壊れた。
「じゃ……行くか」
――ん?
僕がペダルに足を掛けると、僕の背中に何かがコツンと当たった。きみの額だろうか。
「好きだよ」
――聞き間違いだろうか? スキダヨと聞こえた気がした。そして、背中に響いたきみの声が僕の鼓動を急加速させた。
「……え?」
「『静、スイカ好き?』って聞かれたから、そう答えたの。そしたら『俺も好きだよ。……カ』って、中3の夏にダイちゃんに言われた。寝言で」
「……は? 寝言? どこで?」
――何のこっちゃ。僕はたまに寝言を言うらしい。けれど、まさか、そんなこと――。
「ダイちゃんちで。新学期早々夏風邪引いて休んで寝込んでるダイちゃんにお見舞い持ってった時。で、私が『スイカ? 静? どっち?』って笑ってたら、バッて起きて……私にキスして『お前、スイカの味する』って言って……また寝た」
「……え?」
――いやいやいや。全く記憶に無い。
「『スイカとチューする夢見た』とか馬鹿なこと言ってたけど、あの時ダイちゃんがチューしたのは、旬を過ぎて味の薄くなったスイカを爆食いした私だから」
「は……? えっ!?」
「去年も、皆で呑んで酔っ払って眠りこけたダイちゃんがムニャムニャわけわかんないこと言ってたり、私の名前呼びながら自分の親友にチューしようとしたり、ダイちゃんって、寝てる時と酔ってる時やばいよね。あはは」
「えっ、何それ……まじで?」
――僕は病気か!? 全く記憶に無い。
「元彼が『大貴は基本覚えてねぇから気にすんな』って、昔教えてくれた。でも……」
「……でも?」
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