恋を見つけてくれた人

1、前髪パツ子

　お気に入りの部屋の写真をクラスメイトに見せたら引かれた。
　洋服の量が多いからとか（クローゼットにギチギチ）、ベッドに天蓋が付いているからとか（淡いパープルのシフォン素材）、用途別メイクセットがあるからとか（学校用・外出用・夜遊び用・長時間外にいるとき用）、そんなことをモゴモゴ言われた。こっちとしては私が好きな世界を受け入れられない人のほうが不思議。
　私の名前は前谷夏子。読み方は、まえたになつこ。ちなみに影でのあだ名は、前髪パツ子。別にいじめられているわけじゃない。学校には、一応友達がいる。あと、前髪は確かに間違いなくパッツンで、後ろは腰くらいまで伸ばした。普段は偏差値63の普通科の高校に通っている。平日火金と土日どちらかに、学校からも自宅からも離れたコンビニでバイトしてる。本当は化粧品関係のバイトが良かったんだけど、どこも面接で『前谷さんの通ってる高校ってアルバイト禁止じゃない？』と言われ落とされてしまった。そこのコンビニは色々ゆるくてまいっかって感じで。私は、私と、私が好きなものが大切……なんだけど、ちょっとまぁ、違うのもいいかなって思えたのは、動くモジャモジャのおかげ。