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成瀬さん観察日記三日目
夕方、成瀬さんのアパートの方から玄関の扉が閉まる音がすると、カーテンを少し開けて覗き見る。
細い路地を軽装でキャップをかぶり出かけていく感じ、恐らくコンビニか近くのスーパーだろう。
もしくはあの背の高い男の子を迎えに行くのだろうか…
そう思うと胸がギュッて苦しくなった。
見てるだけでよかったのに…
あんな風に話しかけられたら次を期待したくなってしまう。
だけど、そんな事あるはずないと頭を振り邪念を振り払い、窓際のベットフレームにもたれ掛かり成瀬さんの帰りを待っていると、コンビニ袋を提げた成瀬さんが一人で戻ってきた。
どうやら彼の姿はないらしい…
ほっとしてカーテンを閉めようとしたその時、成瀬さんがふっとこちらを見上げた。
バッチリと目が合って何かを訴えかけてくる成瀬さんに、ドキドキしながらカーテンをいつもより開けてそのサインを確認すれば、立ち止まる成瀬さんが俺を見上げながらゴソゴソとコンビニ袋から取り出したのは俺のと同じ銘柄のタバコ…
それを手に持ちチラつかせると口パクで何かを訴えてきた。
「おす…と?……ポスト!ポスト入れとく…か」
ニコッと笑った成瀬さんが俺のアパート下まで移動すると、暫くしてそのままこちらを気にすることなく自分のアパートへと戻って行った。
俺は急いで外に出てポストの中身を確認すると、そこにはタバコとライターと一枚の紙切れが入っていた。
タバコとライターをポケットにしまいその場で二つに折られた紙切れを開くと、そこに書いてあったのは走り書きで一言―――
【見てるだけでいいの?】
俺の心臓は大きく跳ね上がり、思わず口を押え手紙を握りしめた。
やっぱり気がついてたんだ―――
じゃあ、あれはわざと…?
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