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不思議なことが起き始めたのは、スーパーでの運命の出会いから数日過ぎた頃だった。
結局滞在期間を延ばすこともなく一人暮らしのアパートに戻った俺は、バイトに行くかダラダラするかの生活を送っていた。大学の夏休みは9月の下旬まであるし、課題のレポートも大したことない。暇なのである。
「あ、雨」
外が薄暗くなってきたと思ったら、バケツをひっくり返したような雨が降って来た。
これはゲリラ豪雨というやつだな。雨予報はなかったはず。
「は?」
窓の外で、魚が1匹、上から下へと落ちて行った。
その後も1匹、また1匹と一気にではなく少しずつ。何だ? 何が起きている?
超常現象というやつか?
俺の部屋はアパートの2階だ。何が起きたのかと、ワクワクしながら外に出る。
外に出て、階段を上がっている途中で期待は溜息となって消えた。
何のことはない、上の階のオッサンが、魚を入れていたクーラーボックスをひっくり返しただけだった。そういえば、釣りが趣味なのか、たまにクーラーボックス抱えて帰ってくるな。
つまらない。
でも、この状況、既視感があるような。
そうだ、「魚が降ってくる」って、この前実家で日記に書いたことだ。
初日の「小学校の同級生に会う」が不発で終わったし、その後は「テレビが面白かった」「休日だけど早起きできた」なんて日常と変わらないことを書いていたので、今の今まで忘れていた。
「魚が降ってくる」は何日目の日記だっただろう。さすがに日付まで一致していたら気持ち悪いな。
でも、クーラーボックスをひっくり返す程度のこと、起こる確率はゼロではないから、本当に偶然なのだろう。
偶然。
その言葉で片づけられれば良かったのだが、その後も日記に書いたことと全く同じことが起きた。
俺の記憶が正しければ日付も一致している。
「ゴールドを手に入れる」であれば、たまたま応募していた懸賞で純金のアクセサリーが当選していた。
「芸能人に会う」であれば、憧れの女性アナウンサーが街中インタビューをしているところに出くわして、声をかけられた。
今思えば、「日常と変わらないこと」を書いていた日も、それはそれで日記と同じことが発生していると言える。
俺は何だか恐ろしくなってきた。
だが、初日の「同級生に会う」は発生していない。懸賞で応募したのは数か月前の話だし、本当に偶然に偶然が重なっているだけなのかもしれない。
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