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ありがた迷惑な事って結構ある
「くひひっ、あは、あははは……! こ、これ、いひっ、これは流石に予想外っ……いひひひ!」
人が黙って見てりゃ好き勝手に笑いやがって! 何だコラテメー! もしかしなくてもその手の中にある光の玉が贈り物だろ! 絶対それ見て笑ってんだろ!絶対とんでもねーの引いただろクソが!
「はぁ……はぁ……はい、じゃあこれ」
「いらねーわ!! なに何事も無かったように渡そうとしてきてんだ! そんな反応見た後に受け取るわけねーだろバカ!」
「拒否は出来ないんだってば。それにほら、当たりかどうかはこの際消し飛ばしておいて、とりあえずレアな贈り物である事は確かだよ。うん、本当にレアだから、ぷひ」
「ぷひじゃねーよ! 当たりかどうかが一番重要だろうが! 答えろ変態野郎! 何を引きやがった!?」
「まぁまぁ」
「何がまぁまぁだよ! 来んな! 寄んな! じーちゃん式奥義発動すんぞコラァ!」
「ふふ、神には逆らえないんだなぁこれが」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
光の玉がこっちに来るぅ! というかもれなく全身金縛り! 逃げたいのに足が動かん! これが神様の力ってか!? じゃかぁしぃわ!
「テメー覚えてろよ! 今に後悔させて――」
「あ、私達が会うのはこれが最初で最後だから、恨んだって無意味なんだよ。ごめーんね☆」
「ヴォエッ!」
その格好で気色の悪い事を言ってんじゃ……ってそんな事言ってる場合じゃねぇ! もう目の前に光の玉が! アイツの金の玉がー!!!
「怖がらなくていい。痛みは無いし、もしかしたら君の人生も良い方へ好転するかもしれないよ」
「今のままで十分なんだよ!」
欲を言うならムチムチでエッロくてクッソ可愛い嫁さんさえ貰えればいい! それ以上は望まないから! からー!
「はい、フェードインってね」
「うぎゃぁぁぁ!! って何処に入れてんだテメー! 入れるにしても頭とか胸でいいだろ! 何で股間から入れようとしてんだよ馬鹿なの!?」
「いや私じゃなくてこの子が入ろうとしてるんだよね」
今この子っつった!? えっ、ひょっとしてこの金玉意思持ってんの!? やだ尚更キモい!
ふさげんなオメー! 金玉が金玉に入ろうとしてんじゃねーよ! 何がしたいんだよ! ああああああ!! 心なしか股間が暖かい!やだ! こんな温もり知りたくなぁぁぁぁい!
「よし、滞りなく完了だ」
「……」
「そんな睨まないでよ」
結局、抵抗虚しく金玉が俺と融合しちまった。汚された……もうお婿に行けない。
「うーん、でもその贈り物だけだと流石に可哀想な気もするなぁ」
はい確定。コイツ言いやがった、可哀想と言いやがった。つまりそれは、俺に渡した贈り物がハズレって事じゃねーか。
しかもあんなに腹を抱えて笑う程ひっでーもんっぽいし。ふざけんな。
「いっそ殺してくれ」
「気が早いよ。もしかしたら気にいるかもしれないじゃないか。……まず無理だろうけど」
「おい今なんつった」
「こっちの事さ。とにかく譲渡は完了したし、最後に君にはこれもあげよう。特別だよ?」
言うが早いか変態の手から謎のキラキラ粒子が俺の体に向けて照射された。
また得体の知れないものをと文句を言う気力すら無い。ハズレの贈り物を受け取った時点で詰んでるのだ。これ以上何を渡されようが落ちる事もあるまいよ……はぁ。
「はい、完了」
「あんまり聞きたくないけど、何した?」
「神様印の幸運ってやつかな。まぁ2つ目の贈り物と考えてくれればいいよ。
先に渡したものだけじゃ、君の人生めちゃくちゃだろうから、受け取っておいて損はない筈さ」
「そもそも人生狂わすようなもん渡すんじゃねーよ」
「だってランダムなんだもん。仕方ないよね?」
ぶっ殺すぞこの変態!
「君に渡した贈り物の名前は、運命選択。どういうものかは……まぁ普通に過ごしてれば嫌でも分かるよ、嫌でもね」
「おい何で2回言った」
「それじゃ、私の仕事はここまでだ。良い人生になる事を願ってるよ。いやホントに、なるといいね」
俺が何かを言い返す暇もなく、変態の体はスゥッと消えてしまった。
この憤りどうしてくれようか。とりあえず目の前の石碑に向かって中指だけでも立てとこう。くたばれクソ神。
「おーい! ネムー! 助けてってばー!」
どうやら時とやらは動き始めたらしい。後ろから聞こえてくるのは間違いなくライの声だ。
なるほどな。譲渡の際は時を止めるから、ライの時もソッコーで帰ってきたって訳か。俺の感覚だと数分の出来事でも、ライ達からすれば一瞬って事なのだろう。
「はいはい、うるせーな」
欲しくもない贈り物も貰ってしまった事だし、もうここに用は無い。
石碑に背を向けて歩き出す――前に、もう一度だけ中指をあの変態に向けて立たせて、ライの方へ歩き出した。
変態に天罰をってな。
「おい、お前ら散れち……あ?」
心底面倒くさいが、このままライをほっぽって帰るほど腐っちゃいないので、群がる発情女共を追っ払おうとした、その時。
再び時が止まった。
あの変態、最後と言っておきながら性懲りもなくまた出てきやがったのか。
そう思って振り返ろうとしたが、どういう訳か体が動かない。視線だけは動くのに、他は指一本すら動かせなかった。
しかもさっきと明らかに違うのは、世界が灰色に染まっていること。
「(なんこれ? 何が起きてんの?)」
困惑する俺をよそに更なる変化が現れる。
目の前に突如として現れた文字列。慣れ親しんだ言葉で何やら書かれていた。
【とりあえず片っ端から女(男含む)に告白しつつライを助ける】
【花嫁を奪い去るが如くライをお姫様抱っこしてずらかる】
…………ファ?
え、なん、これ……なぁに……? 急に現れといてアホみたいなこと書かれてるけど?
しかも何か、まるで選択肢みたいな――。
「(ハッ!!!?)」
この時、俺に電撃走る。
選択ってまさか……これが運命選択とやらの影響だったりすんの……?
え、じゃあなに? つまり俺は、ここに書かれてる選択肢のどちらかを選ばないといけないの? もしかしなくても選ばなかったらずっとこの状態だったりとか? はは、まさかね~。
――ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
仮にそうだったとしても、もっとマシな選択肢出せや! どっちも地獄じゃねーか! 両方もれなく俺の尊厳崩壊待ったなしだろうが!!
何で告白すんの!? 意味は!? あと男含むなクソボケ!
下は下でキッショイだろ! 何が悲しくて男の親友をお姫様抱っこせにゃならんのよ! 花嫁? 笑わせんな!
嫌だぁぁぁぁ!! どっちも選びたくぬぁぁぁぁぁぁいっ!!!
「(いや落ち着け、冷静に考えろ。どっちを選んだとしても最終的に行動するかどうかは俺次第だ。
ハッ、何が運命選択だ馬鹿馬鹿しい。俺の道は俺が決めんだよぉ! でも万が一を考えて下を選ぶ! 上は論外だ!)」
結論から言えば、この軽はずみな判断を凄く後悔した。
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