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 四匹で抱えて地面に下ろしたのは、小さな狐だった。  白い毛色に、モクリコクリよりも更に細長い身体。背たけはシイの半分ほどしかない。ともすればネズミのようにも見える。そいつはモクリコクリたちに囲まれ、ぶるぶる震えながら縮こまっていた。もう逃げる気などさらさらないようだった。 「おまえ、誰だ? この村の妖怪じゃないよな」  一歩前に出てシイが問いかける。チビの狐は身体を縮めたまま、こくんと頷いた。その口元には食べ物のかすがついている。 「なんて妖怪だ」 「……おいら、妖怪じゃないです」  その口を、おそるおそる開く。 「管狐(くだぎつね)の、イトといいますです」  管狐、とモクリコクリたちは口々に言って顔を見合わせた。管狐は陰陽師の式神として知られている。だが、ここに住む誰もが、実物を見るのは初めてだった。この小さな村に陰陽師はいない。 「管狐ってことは、おまえ、式神だな」シイは、そいつの襟首をちょいとつまんで持ち上げた。「陰陽師になにか命令されたんだろ。何しに来たんだ」  もしかして、よからぬことを……。ざわざわと周囲がざわめき、イトという管狐はぶんぶんと首を振った。 「ち、ちがうです」 「式神がこんなとこにいるなんて、ありえねえ」 「おいら、その……」  もじもじと指を合わせ、イトは言い難そうにまごまごする。余程言えない事情かと思いきや、そのつぶらな瞳から涙がぽろりと零れ落ちた。  ぎょっとしてシイが手を離すと、イトは地面に座り込み涙をふきふき言った。 「迷子になっちゃったんです」
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