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〖 甘えん坊 莉子ちゃん♪ 〗
莉子ちゃんは農家に生まれた。
5人兄弟の末っ子。
莉子ちゃんの父、湯嶋定夫は長年子宝に恵まれず、離婚再婚を繰り返し、やっと
5回目の再婚相手、マツとの間に5人、子供を授かることが出来た。
その5番目の子が莉子ちゃん。私の母だ。
湯嶋家のある村は農村地域。
夏になると豊穣を祈る夏祭りが大々的に
執り行われる。
この日。
莉子ちゃんの父、定夫は村一番の歌い手として盆踊り会場に担ぎ出される。
定夫の歌声で村人が盆踊りを踊るのが通例だった。
歌がうまかったのだ。
定夫は幼い莉子ちゃんと手を繋いで
祭りの出店をまわる。
その光景を他の4人の兄弟はいつも
苦々しく見ていた。
「なんで、お父ちゃんはいつも莉子だけ連れて歩くん?」
「お父ちゃんが抱っこするのはいつも莉子だけ!ズルい!」
莉子ちゃんは幼いながら、他の兄弟から
嫉妬と羨望、憎悪の眼差しで自分が見られている事はわかっていた。
しかし、根っからの末っ子気質なのか
他の兄弟に気を遣うなどという発想は
莉子ちゃんにはなく、言いたい奴には言わせておけばいいさ、くらいに思っていた。
なぜなら、莉子が一番お父ちゃんに愛されてるのは事実なんだから、と。
けれど、莉子ちゃんの幸せは本当に束の間だった。
莉子ちゃんが小学校3年生の時、父 定夫は
病により還らぬ人となる。
その日から数十年。
母親のマツと、兄弟5人は支え合いながら
生きていく事になるのだ。
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