13. 焦点

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 皆それぞれ色々あるものの、五人の中で一番L⇆Right! と何か秘密の関係がありそうなのは大和兎である、というのはSNOWの共通認識であった。これは本格的に五人を調べ始めてから、比較的スムーズに合意に達した事項である。  なにせ大和兎は、飛ぶ鳥落とす勢いである人気雑誌の編集長なのだ。しかもアイドル雑誌に関わらずゴシップも社会問題も扱っている。スクープも連発している。  こういってはなんだが、四季真希が間諜のような働きをしていたという仮定に立った場合、疑うなというほうが無理である。 「まあなんていうか、一番活用できそうなんはあの人なのよねえ」 「会ってみた時の印象も……」  雪枝の言葉には含みがあった。大和兎は、表面上はフランクで話しやすい部類だ。ナミと違って硬いところはあるが、結構親切で小さなことでもすぐに相談に乗ってくれる。そして、目の奥にある光。  SNOWは、いつも油断なく神経を尖らせているその雰囲気に、自分たちと同種のものを否が応にも感じざるをえなかった。経歴からして別にそこまで不自然ではないのだが。 「私、あの人嫌いにはなれないんですよね」 「好き嫌いは関係ないっしょ」  ですよね、とため息を漏らし雪枝は物憂げに睫毛を揺らせた。いかにもこのような時の、雪枝の儚げな様子に葉子は弱い。 『どうも、ああいうのにユッキーは弱いよな~』  葉子の見るところ、雪枝は『NEO NECO!』の持つ社会正義的な側面になにかしら引け目を感じているようだった。自分たちが裏でしていることが、あまり綺麗なことではないと感じているのであろう。  その点では葉子も特に異存はなかったし、また大和兎の功績を認めるのにもやぶさかではない。ないが、雪枝ほど精神に影響は及ぼさなかった。  とりあえず四季の行方を探さなくてはならない。  五人の内誰かがL⇆Right! をスパイとして使っていたのだとすれば、やはり彼らの内の誰か、もしくは誰かと繋がる者たちが四季をかくまっている可能性が高い。  今のところ兎を他より少し厚く、プラス薄っすら他四人の周囲を洗っているのが現状なのだが雪枝の気が急いており、もっと力を集中したいと言いだしたのだ。リソースが貧弱な以上、ある程度は仕方がない。  一番可能性が高そうなのは大和兎、というのは問題なくSNOW全員の一致をみたのだが、その確証を今二人で検討しているところなのである。確証が得られなければ得られないで見切り発車するしかないのだが、何か裏付けのようなものがあればモチベーションや思い切りが桁違いに上がる。  雪枝は大和兎の事跡を記した書類と、四季真希の事跡を書いたものを交互に見比べていた。どちらも年表風の記述になっている。 「……やはり焦点はここになりますねえ」  雪枝は、四季真希側の書類のある一点を指差した。まだ二人がインディーズアイドル『ユメノラビュリントス』で活動していた時代である。四月二日。例の〝奇跡〟の日である。  奇跡の効果で一時的な勢いには乗ったものの、結局ユメラビはしばらく後に解散してしまう。四季真希が最後までセンターを奪えなかったユメラビ絶対エース、蕭何(しょうか)カレン・他数名の引退により氷の溶けるような自然消滅で終わってしまったのである。なんとも無情なものだ。  そして解散後から来月号に当たる『NEO NECO!』から、今のような看板雑誌に成長を始める。  解散後ののちエージェントとしての訓練を積み、大和兎の情報屋として四季真希が働き始めたとしたら、まあ少なくとも時系列的な辻褄は合う。
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