カミキリびより

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 ゆうかちゃんがこない。  今日もいっしょに花飾りをつくる約束をしていた。だけど、いくらまっても、ゆうかちゃんはあらわれなかった。  ゆうかちゃんが約束をやぶったことは、今までなかった。  もしかしたら、カミキリカラスに襲われたのかもしれない。  私は花畑をでて、ゆうかちゃんをさがしにいくことにした。  ゆうかちゃんはある日、ふらりと町にあらわれた。  彼女は真紅のマントを背にまとっていた。  まるで夕陽をせおっているみたいだった。  彼女が歩くたびに、マントは、羽のようにうしろになびいた。  彼女は山のむこうの町からやってきたのだと主張した。  子どもたちは「帝国からきたんだ……」とささやいた。  山のむこうになにがあるのか、子供たちはしらない。……風がとどけた話では、軍需工場の栄える『帝国』があるとのことだった。時々河にながれつく、鉄くずや鉛玉は、『帝国』が河に捨てた物であった。ゆうかちゃんは、山にすむ、牙をもつ獣を、もっていた刀で切り捨てて、山をこえた……といっていた。  ゆうかちゃんは『帝国』にすんでいると明言したことはなかったけど、そのかわり、ガッコウ、という場所で自身が体験したエピソードをおしえてくれた。  ガッコウとは、子どもたちの集会場のような存在だった。そこは、カラスの脅威にさらされていない、平穏な空間で、子どもたちは、毎日、勉学に励んでいた。  ゆうかちゃんがこの町にきた目的は『カミキリカラスを討伐すること』だった。  ゆうかちゃんの家にいってみたけど、彼女のすがたはなかった。  丁寧に手入れのされていた庭だけど、今は雑草が伸び放題になっている。  私は家をあとにすると、子どもたちがあつまる、広場にいってみることにした。
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