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(無題/柴本光義)
おれの武術の師にあたる人が亡くなったと、知り合いが教えてくれたんだ。
小さい頃から何かと世話になってきた。けど、仲違いしてから疎遠になってさ。
そっから気付けば10年くらいか。……いや、もっとだったかな?
ある日突然、人はいなくなる。
この歳になれば嫌でも分かる筈だってのに、信じられなかった。
涙の一滴もこぼれないまま葬儀に出る自分は薄情だと思った。けど、仕方ない。
どのツラ下げて出りゃいいのか分からないまま、焼香と通り一遍の挨拶だけ済ませて斎場を後にしたよ。
その帰りにさ、呼ばれた気がしたんだ。
夕焼けがきれいだった。今くらいの季節は空気が澄んでるだろ?
それだけさ。何にもない。
で、空の上の方をさ、鳥が飛んでいたんだ。なんか気になって見てたら、すっかり暗くなっちまって。
それがどうしたって? あー……うん。そんだけ。
(了)
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