父の手帳

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 四年前。  私は、実家を出て一人暮らしを始めた。そして学生の頃からつきあっていた恋人と半同棲のような生活をして約一年。  私は妊娠した。  妊娠したこと、結婚しようと思っていることを実家に報告に行くと、父は「結婚前に妊娠だなんて」だの「管理がなってない」だのと言って、一切の祝福の言葉をくれなかった。  好きな人との子を妊娠した。順番が違った。ただそれだけのこと。確かにうっかりしていたのは否定できないし、予想外ではあったが、私にとってはとても喜ばしいことだったのだ。  それなのに、また世間を気にしているのかと、祝福してもらえないのかと、悲しかった。  結局、私たちの意思が固いことが伝わり、結婚することに承諾はしてくれた。だが、このことがきっかけで、私と父との間の溝はますます深まった。  母は私を大事にしてくれたし、私が決めたことなら…と応援してくれた。だから妊娠中も、出産してからも、母に会うために帰省はしていた。    
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