父の手帳

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 母は父の死後、精神的に落ち込んでしまい、独身の兄が実家に住み込む形でケアをしてくれている。  何の仕事をしているのかよくわからないけれど、インターネット環境とパソコンがあればどうにかなるらしい。    そして、四十九日が過ぎて、母は少しずつ父の死を受け入れることが出来るようになり、兄と私は父の遺品整理を始めることにしたのだ。  「ちょっと家族葬は無理あったかな」  「断ってるのに、教え子とか押し寄せてきてビビったよね」  「慕われてたってことなんだろうな」  「…そうだね」  父の部屋は、父が入院する前のままだ。  掃除機くらいはかけていたが、それ以外ではあまり入ることはなかった。  「いやー…マジでエロ本にはウケたな…見られて恥ずかしいものは早急に捨てるべきだね」  「さすがにもうそんなのは出てこないでしょ」と、私は父のデスクの引き出しを開ける。  ペンや定規、封筒がキッチリ整った状態で入っており、几帳面な父らしいと感心した。  "へそくり発見!"とかないかなー…と、やましい気持ちで引き出しの奥を探ると、へそくりではなく、黒い手帳を発見した。  十年手帳?  それは、父が退職した年からの物だった。        
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