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パラパラとその手帳の中を見ると、几帳面な割にはさほどマメに記入していないようで、空欄が目立った。そして、その手帳には無造作に破られたページがあり、こんなことするなんて意外だなと思いながらもめくり続けると、不意に二〇一八年のページに水色の蛍光ペンで囲われた文字が目に入った。
そのページは二〇一八年三月十五日で、そこには 父の字で"凛くん誕生!!"と書かれていた。それは、マスからはみ出すくらいの大きな文字だった。
私はその文字を見た瞬間、息がつまった。
力強く書かれたその文字からは、喜びが伝わってくるようだった。
目頭がじんわりと熱くなる。
さらにパラパラとめくると、その次の年には凛君一歳の誕生日、そのまた次の年にも凛くん二歳の誕生日と、その十年手帳の三月十五日には凛の誕生日と記されており、私の誕生日である六月一日にも凛ほどは大きくないが"愛菜の誕生日"と記されていた。
他にも母や兄の誕生日と、結婚記念日も小さく記されていた。
そして、最後のページには凛と私が実家のリビングで同じような格好で並んで昼寝をしている写真が挟まっていた。コロナ前のものだ。
いつの間に撮ったのよ…
私の涙が大粒の雨のように、父の手帳に降りそそいだ。
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