リンゴ色のシャンパン

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アルコールで痛めつけた喉で歌い切った流行りの歌は採点の結果、八十二点だった。 「だめかー」 大げさに叫びながらカウンター机に突っ伏して、込み上げてきた吐き気を飲み込んだ。 「はい、ざんねーん。次行ってみよー」  明るく元気だが感情がこもっていない口調で、カウンター机の向こうに立つアリサが笑う。僕はデンモクを操作し、次に歌う曲を探しながら、 「もう、歌えるの無くなってきたなー」 「えー、じゃあ、私の本名、聞きたくないのー?」 「聞きたーい」 「じゃあ、九十点超えてよー」 「がんばりまーす」  アリサの顔を見ずに答える。無意識に瞬きを繰り返す。体が大きく揺れた。中途半端に空いた口から欠伸の死骸みたいな空気が漏れる。眠たくて仕方がなかったが、明日、ベッドの上で頭蓋骨を擦り潰されるような痛みに苦しめられることが確実だとしても、もう少しここにいたかった。 「じゃあ、がんばってー」 「これまでで何が一番点数高かったっけ?」デンモクを操作しながら言った。 「乾杯の歌じゃない?」 「それ歌ったら、今日だけで三回目になるからなー」 「いいじゃん、何回でも歌えば」
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