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「そうなんですね。よければ、これ、食べてください」ヤギ男が封の空いたポッキーを差し出してきた。「ありがとうございます」
僕はそこから一本取って、食べた。披露宴で食べたウエディングケーキ以来の甘い物だった。僕はスマートフォンを取り出し、撮った写真を見返した。
挙式の写真。披露宴の写真。二次会の写真。新郎新婦や久しぶりに会った友人達と笑い合っているものばかりだった。思い出話に花を咲かせ、現状を伝えあい、いろいろあるよね、という着地点にたどり着き、今日はとにかく飲もう、と酒を飲んだ。
「結婚式って、友達のですか?」ヤギ男が訊いてきた。
「そうです。小学校の時からの友達の」
「へえ、すごーい。仲良しー」ユリが言った。
「これで、地元の仲の良い面子で独身なの僕だけになりましたよ」
「まあ、まだ大丈夫でしょ? お兄さん、いくつ?」ヤギ男が焼酎を一口飲んだ。
「三十二です」
「じゃあ、まだまだ大丈夫ですよ」
「うん。全然余裕」アリサ言ってユリが頷いた。
「でも、まあ、そうですよね。今回の結婚式の余興で歌ったことで、新婦側の友人何人かと知り合いになったんで、そこからなんとかしていけたら、いいんですけどね」
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