リンゴ色のシャンパン

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 皆で終電ギリギリまで一緒に飲んでいた。雄二、マチちゃん、ユッキーは明日仕事で、タケちゃんは休みだが、奥様と出かける用事があるので帰った。明日が休みで予定がなにもないのは僕だけだった。独身のサラリーマンで、転職したばかりなのでまだ役職はない。同年代に比べたら少ない給料とボーナスだが、貯金は平均を少し上回っている。自由に使えるお金もそこそこある。いろいろあるが、それなりに幸せだと思っている。 「ああ、楽しいー」  突然、沸き上がった感情を言葉にしてみた。少し声が裏返った。言った瞬間、どこか本心でない気がした。心に空洞が空いて音もなく隙間風が吹いているように虚しくなった。 「イエーイ、私も楽しいー」アリサが飛び跳ねる。ユリが手を叩く。ヤギ男が微笑んで、 「俺も一曲、歌っていいですか?」 「ぜひ、どうぞ」僕はデンモクを渡した。 「俺が九十点超えても、アリサちゃん、本名教えてね」 「えー、それはどうしよっかなー」 「じゃあ、一本入れてあげるから。そのうえで九十点超えたら教えてよ」 「本当に?」 「ほんと、ほんと。約束する」 「えー、じゃあどれにします」  アリサが言って、ユリがメニュー表を開いてヤギ男に見せた。 「私、これがいいなー」  ユリが五万円のシャンパンを指さした。
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