リンゴ色のシャンパン

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 明日を忘れさせてくれる合図が鳴った。色だけみたらリンゴジュースみたいなシャンパンを喉へ流し込む。当然リンゴジュースの味などしないが、ほんのり甘かった。瞼がじんわりと重たくなり溶けるような快楽が染みて、頬が綻んだ。少しでも気を緩めたら眠ってしまいそうだったが、眠ってしまうのがもったいないと思えるほど楽しくて仕方がなかった。出来る限り、この時間が続けばいいと思った。  誰ともなく拍手をする。誰かが、「よっ!」と言うと、他の誰かが、「よおー!」と言って、また他の誰かが、「よおー!」と手を叩いて、「何これ?」と皆で笑った。  とっくに日付は変わっている。あと数時間で日が昇ってくる。グラスにぼやけて映る自分を眺めながら、明後日からのことを考えようとしてやめる。小さな欠伸が出た。ふと、まだ独身であることが不安になった。  どうしようか。どうすればいいのか。どうにかなるのか。考えようとすれば、するほど、なにも思い浮かばない。シャンパンを舐めるように飲んだ。舌が削れたみたいな苦味を感じた。長く細いため息をついた。ヤギ男が、シャンパンを注いできた。 「ありがとうございます」
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