第2章 薫の冒険

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 結界は青年の身体全身を通り抜けた。目標を失った青年の身体はバランスを崩す。2、3歩片足で大きく前進した後、転倒した。  青年の頭の先は、咎人の足先の前にまで到達した。驚いた咎人は両足を一歩ずつ後退りする。  地面に額を打ち付けた青年は、顔を顰めながら恐る恐る顔を上げる。  見知らぬ3人の男に取り囲まれているのを知ると、青年の表情に緊張が走る。地面に座り直すと、見下ろす男たちに向かって拳を構えた。 「あ、あなたたちは?」青年が3人を見回した。警戒はしているが、恐怖はしていない。  レイモンドは頷きながら「ふぅん」と関心の声を上げると、顎を(さす)った。 「別に怪しい者ではないよ」腰を折り曲げ、青年に恭しく手を差し出す。 「我がブラッディライト家の敷地へようこそ、カオル」
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