第2章 薫の冒険

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 レイモンドは咎人の側にいたルチェの名前を呼び、大きく手を広げた。ハグするつもりなのだろう。ところが、ルチェはそれを回避し咎人の背中に隠れてしまった。  最愛の娘に嫌われたことを再び自覚したレイモンドは、萎びた果物のようになって居間からとぼとぼ出て行った。  執事は主人を一瞥し、ルチェの方に向くと笑顔になった。 「では、ルチェ様。そろそろお部屋に参りましょうか」  次に咎人の方を向いた時には真顔に切り替わった。 「狼森様、先に結界の方へお急ぎください。私は後から向かいます」  咎人は曖昧な返事しか言えなかった。ジョナサンはそのままルチェと手を繋いで居間を出てしまった。  一人居間に取り残された咎人は大きな溜息を吐いた。待機していても執事に叱られるだけなので、仕方なく屋敷を出ることにした。
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