第2章 薫の冒険

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 咎人は山道に躓きそうになりながら下へ駆け降りた。黒い森では木々の葉が生い茂り、天空を狭める。夜間より視界が明確になる分マシな方だが、昼間でもやはり薄暗い。一人ではあまり通りたくない道だ。  しばらくすると、森を抜けた先には開けた明るい場所がある。あそこが出口だ。一ヶ月前に逃げ出せると思って安堵した咎人の希望を、見えない壁が断ち切った。壊れない結界は、吸血鬼の魔の手から逃れる未来を閉ざした。  そんな結界の前にいたのだ、黒い人影が。
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