第2章 薫の冒険

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 ジョナサンも結界の前まで来て、咎人の隣に立った。青年はジョナサンの存在にも気付いていない。ジョナサンや咎人より背丈の大きい、レイモンドでさえもだ。  青年にはこちら側が見えていないのだろうか。 「なあ、これはどういうことだ」と咎人が青年を見つめたまま、隣の執事に尋ねる。ジョナサンは質問の意図を汲み取ったのか、的確な回答を与えた。 「結界を張ることには、外部からの侵入を防止するというだけでなく、屋敷の存在を隠すという目的もございます。そのため、外部の人間にはこちらの景色を見ることができません。見えるのは、結界が創造した幻影のみです」  咎人は何となく理解した。つまり、屋敷は上手く出来たハリボテに囲まれているということだろう。壮大な建造物が実は偽物だったという場合と逆のパターンになる。  こちら側の存在を認知せず、同じ動きしかしない青年を見ていると、まるで彼の方が檻の中の動物のようだった。実際、檻に似た切り取られた空間の中にいるのは咎人たちの方だ。
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