プロローグ

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 犯人は被害者と面識がない者と断定された。その理由は、被害者に家族といった身寄りがなく、友人と呼べる友人もいなかったからだ。  被害者に面識がある者と言っても、隣近所か共同墓地の管理事務所の関係者、そして利用者だけだった。そんな彼らも被害者とは全く交流を持っておらず、ただ一言二言挨拶を交わすだけの間柄だった。  戸籍にも被害者本人の氏名と住所、電話番号しか記載されておらず、近親者の連絡先は不明だった。  被害者本人が住む古い木造アパートを捜査しても、アルバムや手紙など近親者との関係を調査するための手掛かりらしい物はどこにも見当たらなかった。  遺体は事件性の疑いがあるとして、司法解剖のため東京の大学病院に搬送されることになった。司法解剖をするには事前に親族への依頼が必要だったが、この被害者の場合は不必要のようだった。  そして、遺体が発見された日から3日後の夜のこと。事件に関わった誰もが予想だにしないが発生した。
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