第2章 薫の冒険

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 くぐもった唸り声を聞いて、薫はハッと我に返った。穴の中が真っ暗なせいで何も見えないが、明らかに張り詰めた糸か紐が切れる歯切れのいい音が連続して聞こえた。  咎人の苦しげな声はまだ聞こえる。時折声量が大きくなり、その時にぷちりぷちり何かが切れるのだ。  捕食者に絡み取られた獲物は、不利な状況を目の前にして抵抗し続けていた。  薫はごくりと唾を飲んだ。彼はきっと薫が助けてくれるとは思っていない。だからこそ、死に物狂いで抵抗するのだ。  もう限界だ。  入れ子構造になった薫の、一番下の層から再び声が聞こえた。  そうだ、薫。君は魔術を使えるから、それで化け物を撃退するんだ。狼森さんを助けるんだ。  薫は唇をキュッと引き締めた。両手の平を見つめ、翡翠の光を浮かべる。3日前に結界を殴っていた時より、その光は薄弱だった。  薫にできるわけないよ。君は「泣き虫薫」なんだから。  もう一人の薫が呆れながら反論する。薫は悔しくなって両拳を握り締めた。歯を食い縛り、涙が流れるのを我慢する。  その時、咎人が肺を搾り出すかのような勢いで喘ぎ声を上げた。
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