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 アルバイト先では相変わらず口やかましい店長につかまっているが、奏絵と打ち解けていったころはそれほど堪えなかったと、今振り返ることもできる。  そしてキリエさんの目にも、僕の気分の落ち込みが明らかだったようだ。  仕事上がりに 「今日はずっと具合悪そうやったな」  そう声を掛けてきた。  奏絵とのやり取りについて、終わってから全てをまこっちゃんに打ち明けたところ「ああ、あれ、五十嵐じゃなかったんだ?」というところから話が始まってしまったが、自分の妄想で期待を膨らませてしまうのは”青春あるある”だな、と彼とは、幾分俯瞰した結論に達したのだった。  それから漫然と過ごしているうちに、残暑が長引く街を吹く風にも、ほんのりと秋の匂いが混じり始める。  夏休みも終盤なのだった。     
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