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「おいこら! なにやってんだよ!」  店長の怒声が飛ぶ。  うどん専門店の昼どき。  その忙しさは尋常ではない。 「早く料理持ってけよ! 麺がのびるだろうが!」     デシャップ台に、うどんや丼が次々と並ぶ。  僕は急いで盆を並べて、伝票の順に料理を載せていく。  それを手に駆け出そうとすると、また「こら!」と声を掛けられる。 「はい?」 「のり! かつ丼にのり乗っけてけよ、何回言わすんだ、ばっかやろう!」 「あ、はい! すみません」  また戻ってきて、のりの容器に手を伸ばし、トングをつかむ。  店長は、もう白髪の混じった小太りの中高年の男性といった出で立ちで、何でも関東の系列店から異動でやってきたと聞いている。  どうも向こうの言葉が口をついて出るが、関西弁とは違う角があった。
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